明日への挑戦

2010年01月04日

石田農具製作所店主の石田泰史さん(84)と妻の登芽さん(77)


「風呂鍬」を手作りする石田さん

  【山口】親から引き継ぎ1本1本手作りの農具を製造する宇部市の石田農具製作所店主の石田泰史さん(84)は、妻の登芽さん(77)と二人で、木製の柄に鉄製の刃先を付けた木の鍬「風呂鍬」を製造する。今でも切れ味、長もてがする、使いかってが良いと、手作り農具に愛着を持つ農家に人気がある。


  創業は1937年。農業の機械化が始まる前は残業しても納期が間に合わないほど注文があった。今は農業の衰退と機械化で需要も減るなか、家庭菜園や機械で耕起できない所を鍬で利用する農家が訪れる。県内の一部JAへ納入する。製造と修理は時間がかかり収益も度外視し、訪問修理も気軽に応じる。最近安い物が量販店に出回り、個人経営は大変な状況だが、石田さんが刃先に硬い樫の木の柄をかしめて締めて作る「風呂鍬」は高度な技術が必要。手作り農具の製造は県下ではここのみ。エコ農業では必要不可欠な道具で、伝承技術として貴重な存在だ。


  店内はノミ、カンナ、ドリルなどがぐるり並び平鍬や菜園鍵、三鍬、植木堀や片手鍬などや、最近は錆びない泥が付きぬくいステンレス製の鍬の刃先に鋼を溶接した鍬も販売する。数年前まで柔剣道を子供らに指導、このため県外から武道で使う棒剣の注文も請け負う。「健康で自分の体が続く限り、手作り農具にこだわりたい」と、夫婦は笑顔で話す。

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