明日への挑戦

2012年01月20日

消費者目線の生産で経営スタイルを確立/「佐伯農園」佐伯靖史さんの取り組み


経営者の佐伯さん(右)と研修生の戸田さん(左)

 萩市で「佐伯農園」を経営する佐伯靖史さんは、シクラメンやカーネーション、花壇苗など、数多くの種類の花を栽培している。

 

 以前、佐伯さんは野菜農家として就農し、トマトやキュウリ、ホウレンソウ、レタスなどを栽培してきた。しかし、冬場の日照量が少ないことや、日本海特有の気候条件が経営の弊害となり、1994年に花農家に転身した。現在、ハウスで鉢物を1万8千鉢、苗物を15万ポット、計40アールの規模で経営している。

 

 佐伯さんは「冬場の低温に対しては温度調節で十分対応できるが、日照時間だけは調整することが難しい。瀬戸内側と比べると、どうしても花が育つのに時間がかかる。そこで考えついたのが、少量多品目生産に重点を置くこと」と話す。出荷時期を分散させることで、冬場の不利な生産条件を補うとともに、幅広い消費者の趣向を満たすことが可能となった。

 

 佐伯さんは研修生の受入れに積極的で、これまで農業大学校の学生などの受入れも行ってきた。「実際に農業を体験してみて、自分に適しているかどうか自ら判断することが大切。研修中に十分な経験を積み、自信を持って就農してほしい」と県の指導農業士として就農希望者の支援を続けている。

 

 「佐伯農園」では、佐伯さんを含め5人の従業員が栽培に携わっている。戸田秀幸さんは、3年前からここで研修生として経験を積んできた。

 

 戸田さんは「就農するまでの期間に、農家のもとで真剣に農業経営と向き合うことができた。このような支援が、就農希望者にとって農業への疑問や不安を解消する有効な手段となり、就農後の経営安定化につながる」と事前研修のメリットを実感する。

 

 佐伯さんは、栽培した花を市場や道の駅などに出荷しており「少量多品目生産が私たちの経営スタイルであり、消費者のニーズを常に意識しなければならない。対面販売の機会を増やし、自分たちの経営に反映したい」と話す。戸田さんは「特に若い人たちにとっては、花の世話の仕方が分からないため購入に踏み切れない人が少なくない。ただ生産するだけではなく、販売と同時に育て方・楽しみ方を伝えていく、そういった役割も果たしていきたい」と話す。

 

 佐伯さんは、消費者の目線に立ち、生産から販売までの一貫した取り組みを進めており、今後も戸田さんたちとともに愛情込めた花づくりを目指す。

このページの先頭へ