明日への挑戦

2012年02月02日

ふるさとの味を継承し、笑顔であふれる地域づくりを目指して/「農事組合法人 伊陸美味」代表理事・佐伯則幸さんの取り組み


佐伯則幸さん(上記写真後列右)や 頼廣ユキ子さん(上記写真前列右) をはじめ「伊陸美味」のみなさん、伊陸美味ふるさとセット(茶がゆセット)

 柳井市伊陸木部で農業を展開している「農事組合法人 伊陸美味(いかちうま)」は、2007年3月に法人化し、水稲、タマネギ、小麦の栽培と、加工事業に取り組んでいる。ユニークな法人名は、柳井地域の方言から生み出された。

 

 同法人で代表理事を務める佐伯則幸さんは、法人化を契機に、機械の共同利用や農地の集積などに取り組んできた。傾斜地が多く、大規模農業が困難な中山間地域であることから、効率的に地場産農産物を販売しようと、2008年に自前で加工所を開設。加工事業を本格化させ、今では地域の人たちの交流の場にもなっている。

 

 加工部では女性が中心となって、農産物加工のほか、伝統的な製法を駆使した梅干、たくあん、らっきょう漬けなどに取り組んでいる。

 

 頼廣ユキ子さんは、県生活改良普及員時代の経験を活かし「私たちは、調味料を使わない漬物作りを続けている。特に、梅干作りでは塩加減を工夫しており、市販のものよりずっと酸っぱい。でも、昔の味を思い起こすと評判がある」と笑顔で話す。

 

 同法人では、これら自慢の加工品を詰め合わせ「伊陸美味ふるさとセット」として数量限定で販売している。「茶がゆセット」「ぶち美味セット」「漬物セット」の3種類を用意し、伊陸米、梅、らっきょう、漬物、番茶といった、ご当地ならではの農産物が詰まっている。柳井地域には、昔から茶がゆを食べる風習があり、伝統料理として根付いている。このふるさとセットでは、自宅で気軽に伝統料理を味わうことができる。

 

 「私たち農家は、農業に取り組むだけではなく、受け継がれてきたふるさとの味を伝承していくことも大切な役割である。法人の特色を活かした魅力ある商品づくりに向けて、組合員とともに、元気で楽しみながら取り組んでいきたい」と佐伯さんは語る。

 

 伊陸美味の活動の原動力となっている女性メンバーは、法人化前から、伊陸地区で高齢者介護事業を展開するオアシスグループの活動を経験しており、地域住民からの信頼も厚く、法人の経営多角化にも寄与している。さらに、女性メンバーたちが編集した「むら・人・くらしの聞き書き集」では、伊陸の農家の暮らし、ふるさとの味、言い伝え、言葉などを紹介しており、地域を知る上で大変貴重な資料となっている。このような地域に根ざした活動の積み重ねが、今日の法人経営にプラスとなって表れている。

 

 現在、佐伯さんは、新たに惣菜加工の取り組みに向けて準備を進めている。法人自慢の加工品をファンに届け、組合員とともに、笑顔で地域全体に活力を与え続ける。

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