新着情報

2009年08月18日

「35年、心強かった」 最後の日口々に感謝/JA山口厚生連の離島検診バス 改修診療所へバトン


島民に検診の内容を説明する JA山口厚生連の保健師ら (24日、山口県萩市見島で)

 JA山口厚生連は7月24日、山口県萩市の離島、見島で検診活動を終えた。検診バスを自衛隊の協力で輸送船で運び、離島の医療を支え35年。診療所の改修で態勢が整ったことから役目を終えた厚生連の医療スタッフらに、島民は「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えていた。
 
 見島は萩市本土から45キロ離れた山口県最北端の島。住民およそ1000人が生活する。島に診療所はあるが、胃のレントゲン撮影などがん検診ができる医療機器がない。そのため見島農協(現在・JAあぶらんど萩)と見島地区社会福祉協議会の働き掛けで1973年、海上自衛隊佐世保地方隊が長崎から輸送艇で同厚生連のバスを運び、島での検診が始まった。同厚生連はバス2台を1週間程度確保し、放射線技師や保健師ら5人を3日間派遣。本土での委託料金と同額を市から受け取り、職員の宿泊料やバスの確保代などを負担。実質は利益より持ち出し分がかなり多かったという。
 
 派遣は年1回。本土でしかできなかった胃がんや肺がん、子宮がんなどの検診が可能になり、島民およそ350人が受診している。
 
 同市は相島や大島などの離島を抱えるが、本土に近い、診療所の設備が整っているといった理由でバスの派遣はしていない。本土から最も離れた見島は当初高速船がなく、片道3時間弱の船に乗ることが負担になる高齢者が多かった。JA見島支所の山田泰宏支所長は「検診バスが来るとうれしかった。長年来てくれて、安心感を与えてくれた。心からお礼を言いたい」と振り返る。
 
 最後に「ありがとう」「助かったよ」と感謝の声が多く上がる一方、「寂しくなる」と話す島民もいた。同厚生連の濱田美晴保健師は「輸送艦での移動は大変だが、島の人がすごく喜んでくれてやりがいがあった。離島の検診を担ってきた役割は大きかったと思う」と強調する。
 
 同市は24日、長年の離島医療の貢献に感謝の気持ちを込めてセレモニーを開いた。同厚生連の西山幸雄代表理事専務は「JAが厚生事業を担う意義が見島での検診に象徴されている。診療所改修なので、島民にとってバスとの寂しい別れではなく、明るい出発になれば」と話した。

このページの先頭へ