光市束荷地区(旧熊毛郡大和町)は、市の北東部に位置し、四方を山に囲まれた丘陵地帯で、全般に肥沃な土地を有する農村が広がる。
「農事組合法人 つかり」は、ここ束荷地区(96ヘクタール)で農業生産を行っており、8集落120戸で構成。1984年からの圃場整備事業を契機に、2000年の束荷営農組合設立を経て、2002年に設立。現在農地32ヘクタールで、米、大豆、タマネギ、広島菜、施設イチゴなどを生産している。
同法人で理事を務める森重定昌さんは、法人の経営理念として「4つの創造」(1.農用地の保全、2.労働の創出、3.特産物の創出、4.交流活動の醸成)を掲げ、特徴ある農業を展開している。その中でも、労働の創出においては、周年労働体系や担い手の生活を重視した作業形態を確立し、給与制の導入にもつなげている。
「地域のために何ができるかを念頭に、私たちならではの農業に取り組んでいる。将来的には、消費者が参加できる体験農園などにもチャレンジしたい」と意欲的な森重さん。組合員が共通の目標に向かって活動している。
同法人は、定年帰農者の積極的な受入れなど、雇用の受け皿として地域社会に貢献している。今年4月には、農業大学校を卒業したばかりの福田大樹さんと麻野将也さんを新たに雇用した。2人は、農業大学校で学んだ野菜・果樹栽培等の技術を活かし、法人の一員として地域農業と向き合っている。
森重さんは「世代交代がなかなか進まない中での、新たな2人の加入は、法人にとって大きな戦力となり、地域全体に元気を与えてくれる」とその活躍ぶりに期待を寄せる。
「地元で農業がしたいと、ずっと願ってきた。つかりで就農し、地域の人たちとかかわりながら充実した毎日を送っている」と夢への第一歩を踏み出した福田さん。同時に就農した麻野さんが良きライバルとなり、互いに高め合える存在となっている。
森重さんは、周年栽培の強みを活かした加工事業の充実による束荷地区のブランド確立、他産業と同様の安定した賃金の支払いを目指し、それが継続できれば経営として成立すると考える。
「束荷地区には、地域ぐるみで活動できる協力体制が整っており、多くの人たちが私たち法人を支えてくれている。女性組合員の力をはじめ、新たに加入した2人のバックアップは、私たちの活動を支える欠かせない存在となっている」と森重さんは話す。
若い力を取り入れ、さらに発展した「農事組合法人 つかり」。森重さんは、地元のために知恵を絞り、経営力を高め、地域のシンボルとなれるような法人を目指して、地域農業を牽引していく。