「農事組合法人 上り熊」は、防府市台道上り熊地区で32haの農地を集積し、水稲・小麦・タマネギ・ソバなどの露地野菜を組み合わせた土地利用型農業を展開している。組合長の藤田文雄さんをはじめ、60人の組合員で構成、エコファーマーの認定も受けている。
法人設立以前、上り熊地区は不正形な未整備田であったため、用水確保や排水が不十分で作業効率が悪く、耕作放棄地も増加の一途をたどっていた。こうした状況を打破しようと、圃場整備工事に向けて、農地の状況調査や営農意向アンケートを実施。圃場整備後の営農構想のもと、地元説明会などを経て基盤整備事業をスタートした。
この事業に合わせて、個別経営・農機具の過剰投資からの脱却と、効率的で永続性のある農業を目指し、2007年3月に「農事組合法人 上り熊」を設立。昨春に、基盤整備事業が全地域で完了し、来春には暗渠排水装置が完成予定である。
藤田さんは「インフラが整備され農地の集積も順調に進み、今では荒地の大部分が解消した。女性班も発足し、主要品目以外の栽培も考えている」と、組織基盤の強化に向けた取組みを進めている。
同法人では、組合員の持つ技術や地域の特色を活かして、食農教育にも力を入れている。学校給食に栽培したタマネギを供給し、児童にタマネギを使ったメニューを振る舞ったり、小学校の課外授業でパン用小麦ニシノカオリの収穫体験の受け入れを行うなど、実際に子どもたちとふれあう場を設けながら、地産地消に取組んでいる。
さらに、女性班立ち上げを機に、ソバ打ち体験や藤田さん直伝の漬物づくり体験など、大人から子どもまで楽しめるイベントも次々と開催している。
藤田さんは「我々の法人は、決して規模が大きいとは言えない。しかし、それでも上り熊の農業が持つ魅力を最大限引き出せるよう、常に様々なことにチャレンジしたい」と語る。
また、生産者にとって共通の悩みである販売価格の低迷の現状を踏まえ「担い手の確保も大切だが、まずは所得の向上を実現することが先決。法人の柱として水稲・小麦・タマネギなどの生産量を安定させ経営の複合化を図るとともに、売れるものづくりや新たな販路の確保など、他の法人との連携も視野に取組みを進める必要がある」とあらゆる角度から地域農業を見つめている。
「農地の荒廃は地域の荒廃」と話す藤田さんは、法人を支えるオペレーターや女性の力とともに、地域と連携し上り熊の農業を守り続ける。