農事組合法人ウエストいかちは、組合長の村岡信保さんをはじめ、伊陸(いかち)西部の35haの農地を集積し、水稲、大豆、タマネギ、キャベツなどを生産している。「自分の農地は自分で守る」を合言葉に、農地の出し手自らが草刈を行うなど、協力体制も構築している。
同法人の経営理念は、農地を守りながら協業による成果を実現すること。多様な組合員が知恵を出し合い、楽しみながら農業と向き合い、農地を守っている。
オペレーターの平均年齢は60歳以上と高齢者が多く、担い手の確保が課題となっている。住民の多くが地区外で勤務し、農家の9割が兼業農家である。しかし、こうした地域であるからこそ、村岡さんは定年退職者の持つ農業以外の幅広い技術・知識をノウハウとして蓄積し、法人経営の支えとなるよう、環境整備にも努めている。
同法人は、法人化検討委員会や先進地視察、組合員への意向調査などを経て2006年4月に法人化。機械修理や税務・経理など、多様な経験を持つ組合員が個々のキャリアを活かし、法人経営を支えている。
村岡さんは「大昔から続いてきた個人営農を法人経営に移行し、さらに6つの集落をひとつの法人に参画するため、組合員の意思統一には最も力を注いだ。熱意と気力がなければ、とても乗り切れなかった」と当時を振り返る。
現在では、法人に加入した組合員から「先祖代々受け継がれてきた農地を荒らすことなく次世代に継承でき、法人化してよかった。個の作業から協業にかわり、集落の女性相互が語り合う機会が増えた」といった声が多く挙がり、法人への結集力が高まっている。
昨年4月に結成した女性グループ「四つ葉クラブ」では、女性が中心となって加工・販売・サークル活動などに取組んでいる。地域のイベントには、ファーマーズ・マーケットとして積極的に出向き、毎年2月に開く「キャベツ祭」は多くの人で賑わう人気行事として定着している。
消費者との交流以外にも、近隣の農業法人と連携した稲の直播作業などに取組んでおり、人と人とのつながりを軸に法人間の連携も深まっている。このような幅広いつながりが、ウエストいかちに力を与えている。
村岡組合長は「現在、女性組合員が中心となって加工事業に取組んでおり、地元のイベントなどで販売している。これらの事業を組合員一丸となって発展させ、将来的には6次産業化につなげたい。法人を支えてくれる多様な力をフル活用し、法人のブランド確立に向けて頑張りたい」と想いを語る。
組合員と共に働き、共に語り、絆が深まるウエストいかち。多くの人たちとの関わり合いがもたらす今後の活躍に、期待が高まる。