明日への挑戦

2010年02月17日

山口市徳地船路の椎茸栽培農家、井原英夫さん(77)


椎茸の原木が並ぶハウス内の英夫さん夫婦

 昨年、椎茸などきのこ類の調査研究や栽培に功績のあった者を表彰する森喜作賞の生産部門の一名に山口市徳地船路の井原英夫さん(77)が本県で初めて選ばれた。
 
 井原さんは妻の啓子さん(73)と50数年の永きにわたり椎茸生産一筋の専業農家。当初仲間づくりに徳地町椎茸生産協議会や船路産業振興会も立ち上げた。今は徳地林業振興会会長として、椎茸振興に貢献している。井原さんは「椎茸栽培を始めて54年目に思いがけない賞をいただき、感激と喜びがある」と、笑顔で話す。
 
 経営は林業と椎茸栽培で、林業(40ヘクタール)は外材に押されて不況。今は主に椎茸栽培の原木材(6ヘクタール=くぬぎ林)を育て種齣を年間4,000本~5,000本打ち込み、毎年乾燥椎茸を出荷する。先輩から椎茸生産は原木づくりが基本と教わり、計画増産するため40年前から原木の苗を植え付け、20年後に椎茸の原木として伐採する。原木の耐用年数は約5年、数十年の歳月を経て生産する椎茸は、この作業を毎年繰り返すことが収穫に繋がり生活基盤も確立できる。
 
 食品の偽装表示が発覚して以降、消費者は安全・安心な農畜産物を求めている。農薬や化学肥料を一切使用しない椎茸は人気があり、生産が追いつかない状況だ。収穫は春と秋の2回で需要も反映して昨年も完売した。
 
 標高差を利用した栽培は、寒暖差と年間を通じた雨量で、美味しい椎茸に仕上がり、収穫時期もずれて作業が分担出来る。自然力で育った椎茸は「自分で販売することが大切」と話す英夫さんに、対面販売で協力する啓子さん。「消費者指向は自然食品に向けられている。椎茸は栄養化も高く、健康食品として喜ばれており、安全な椎茸を広くPRしたい」と、意気込む。女性部「森のきのこグループ」活動ではイベントに参加、固定客を増やすとともに、管内の直売所やJA加工センターへ出荷する。英夫さんは担い手を育てようと地元小学生を招いて種齣打ちの体験など食農教育に協力する。「息子も良き理解者で休日は手伝ってくれ、後継者として期待している」と、顔が自然と微笑む。

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